スイス・バーチ 上野Gと提携、日本市場開拓
欧ISOタンクオペ大手
スイスのISOタンクコンテナオペレーター大手、バーチグローバルは先ごろ、上野グループの上野ロジケムを日本総代理店に起用した。グローバル市場と比較して日系業者が強い市場で、地場有力企業と提携しながら日本市場を開拓していく。
日本のタンクコンテナ市場は、世界トップ10に入るようなタンクオペレーター大手のシェアが伸びない一方、日系大手のシェア拡大が目立つ。
バーチ社は従来、正規代理店を置かずに日本市場に対応してきたが、日本でのさらなる事業基盤強化を見据え、国内の液状貨物取り扱い大手、上野グループとの提携を決めた。
バーチ社は1956年設立の老舗タンクオペレーターで、2019年売上高は9億8500万スイス㌵(約1100億円)。ISOタンクコンテナのフリート数は2万3300基で、運用規模は世界第4位。24㌔㍑と26㌔㍑の2タイプで、歩み板(移動用の足場)を全面に取り付けるなど安全性確保にも注力する。最高温度は160度、加温機能は12温度帯と一般のタンクコンテナより充実しており、下部荷出口には残液が残りにくく、一度の排出量が多いバルブを採用している。
タンクコンテナ輸送だけでなく、危険物倉庫、トラックなどトータル物流を提供できるのも強みだ。
保有トラックは約1100台。陸送施設ではシンガポールの石油化学産業集積地ジュロン港で16年から17年にかけて危険物倉庫を整備。中国でも化学工業園区内に危険物ハブ(タンクコンテナ保管施設と危険物倉庫)を運営している。
また、ベルギーでは先ごろアントワープの危険物ハブを増強し、タンクコンテナの保管能力を2000基に増強した。
■海外と日本市場つなぐ
バーチと上野グループの提携を仲介したのは、物流コンサルタントのジェイ・トラッド(北野宣幸社長)。同社はISOタンクコンテナの販売、レンタル事業なども手掛ける。
北野社長は外資の存在感が相対的に低い日本市場の特性を指摘し「中国や欧米のタンクオペレーターを日本に誘致するなど、サービスを充実させ、市場を活性化したい。国内外を問わず、パートナー探しをする企業のサポート、コンサルティングを今後も展開し、ISOタンクコンテナの普及や、販売・レンタル事業の強化につなげたい」と語る。
近年は日本の化学品物流大手がタンクコンテナ関連事業を強化し、事業拡大を進めるのか、液体危険物のバルク輸送を得意とする物流会社が新規事業として同様の取り組みを進めている。外資タンクオペレーターにとって日本は重要市場だが、事業基盤の確立が難しい。ジェイ・トラッドでは双方のニーズのマッチングをすることで、市場活性化につなげたい考えだ。
『日本海事新聞』2020年(令和2年)3月6日 3面